植物多様性保全事業
日本植物園協会では植物園の責務と社会からの要請に応えるため、植物の多様性を守る活動に力を入れています。
日本植物園協会と保全活動
植物園は生きた植物を収集、保存、展示する博物館の一つです。植物園では古くから珍しい植物の収集や展示に力を入れてきましたが、そうした植物の多くが絶滅危惧種であることに早くから気づき、日本植物園協会では1992年に絶滅危惧植物対策委員会を設置、加盟植物園の協力を得ながら植物保全を実践してきました。2006年には本委員会を植物多様性保全委員会と改称、また、「植物多様性保全拠点園ネットワーク」を発足させ、さらに積極的に植物を守る活動を継続しています。
植物多様性保全拠点園ネットワーク
残念ながら日本には植物保全を目的とした巨大な植物園はありません。全国の植物園がそれぞれの特色を活かして分担し、力をあわせて活動することが不可欠です。そこで、植物園での「保全植物種の増加」「保全植物の質の向上」を目指し、気候・地域・専門分野等に配慮した保全の拠点となる植物園(植物多様性保全拠点園)を全国各地に設けました。各地域の保全ターゲット種を明確にし、植物園、研究機関、市民団体、行政等との有機的なネットワークを構築することにより、効率的な保全を推進しています。
保全に関する目標設定
日本植物園協会では生物多様性条約や各締約国会議で示された世界目標、世界植物保全戦略(GSPS)、日本の生物多様性国家戦略などに基づき、独自の目標を設定して保全活動を行なっています。
- 【目標】
- 2010年度中に、日本の植物園において日本産絶滅危惧植物種の60%を保有する。また、日本の植物園において日本産絶滅危惧植物種の45%は自生地情報の明確な個体を保有する。
- 【成果】
- 日本産絶滅危惧植物種の60.4%(1,021種類)を保有
日本産絶滅危惧植物種の47.6%(804種類)は自生地情報の明確な個体を保有
- 【ミッション】
- わが国のすべての野生植物種の生息域外保全と、有用植物資源の系統保存の中核として貢献する
- 【主要目標】
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- 2020年までに日本産絶滅危惧植物種の75%(※1,268種類)生息域外保全を実施する〈※第3次レッドリスト〉
- 2020年までに日本産絶滅危惧植物種を網羅する効果的な保全手法を提示する
- コレクション構築、保存、継承の方法を標準化し、ナショナルコレクションを確立する
- すべての植物園で生物多様性保全の理解に資する学習支援事業を実施する
- 【成果】
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- 77%(1,304種類)を達成〈絶滅危惧種増加により第4次レッドリストでは73%〉
- 野生復帰モデル事業、種子保存、個体情報と特性情報のデータベース化など実施
- 「ナショナルコレクション認定制度」がスタート
- 「教育普及委員会」設置と活動、「植物園と市民で進める植物多様性保全ニュース」刊行
これまでの植物多様性保全に資する活動の成果と「生物多様性国家戦略2023-2030」に基づき、日本植物園協会は植物多様性保全2030年目標を下記のとおり定めました。(2024年12月6日理事会承認)
- 【ミッション】
- わが国のすべての野生植物種の生息域外保全と有用植物資源の系統保存の中核として貢献する。
- 【主な目標】
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- 2030年までに日本産絶滅危惧維管束植物*1600種類の自生地情報を持つ種子・胞子を保存する。
*1 環境省レッドリスト2025に基づく - 2030年までに日本産絶滅危惧維管束植物1,200種類(対象種の約68%)について自生地情報を持つ個体を生息域外保全する。
- 植物多様性保全拠点園ネットワークとナショナルコレクション認定制度を核とし、植物園と外部セクターが連携した植物遺伝資源保全を強化する。
- さまざまな主体が連携することによって種内の遺伝的多様性を確保するメタコレクション*2を推進し、野生復帰のファウンダーを確保する。
*2 複数の植物園が協働して同一種の遺伝的多様性を維持する保全手法 - 系統保存個体のデータベース化を推進し、自生地情報を持つ日本産絶滅危惧維管束植物600種類の個体情報について、2030年までにデータベースを用いて全国の植物園で共有する。
- 全国の植物園で、生物多様性と生態系に関する市民の行動変容のきっかけとなる学習支援事業を実施する。
- 2030年までに日本産絶滅危惧維管束植物*1600種類の自生地情報を持つ種子・胞子を保存する。
- 【そのほかの目標】
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- 2030年までに日本産絶滅危惧維管束植物1,400種類(対象種の約79%)を生息域外保全する。
- すべての植物園が侵略的外来生物に対して適切に対応する体制を確立する。
- 植物園の有する都市緑地、自然共生サイト*3の機能を活かした取り組みを推進する。
*3 民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域 - 気候変動、生育立地消失、栽培困難種等を考慮した保全戦略を確立する。
- 地域の生物多様性、環境、伝統文化を包括して知り、守り、伝える取り組みを推進することにより、自然環境を保全、再生する。
- 植物遺伝資源(絶滅危惧種を含む)の収集、移動、保存、展示等に関連する法令について、植物園職員の理解を推進する。
- 農薬・肥料・資材の使用、温室効果ガス排出等に配慮した「持続可能な園芸」を推進する。
連携・ネットワーク
植物を守る活動は、植物園だけで出来ることではありません。これまで地域の植物を調べ、守り、育ててきた市民や保全団体の豊富な知識、地域の方々、行政の方々の理解と協力が必要です。日本植物園協会では、それぞれの地域の植物園とともに植物の調査や保全を進める団体等と連携した、より良い保全ネットワーク作りを目指しています。
環境省との協定
日本植物園協会と環境省は、絶滅危惧種の生息域外保全や外来種対策、保全に係る普及啓発等に関してより一層連携して取り組むため、平成27年に「生物多様性保全の推進に関する基本協定書」(令和7年5月20日一部変更)を締結しました。
静岡県産絶滅危惧植物の生息域外保全連携活動
日本植物園協会、静岡県、環境省新宿御苑管理事務所の3者は、「静岡県産絶滅危惧植物の生息域外保全連携活動」の実施のため、覚書を取り交わしました。
詳しくは環境省新宿御苑管理事務所ホームページをご覧ください。