総裁のおことば
公益社団法人日本植物園協会第59回大会 総裁 秋篠宮皇嗣殿下 おことば
「公益社団法人日本植物園協会第59回大会」が、筑波山や霞ヶ浦、利根川をはじめとする豊かな自然環境を有する茨城県で開催され、本年も皆様とお目にかかれましたことを誠にうれしく思います。また、本日表彰を受けられる方々に、心からお慶びを申し上げます。
日本植物園協会は、1947年5月の設立以来、今年で77年を迎えました。この間、全国的な植物園ネットワークを通じて、植物園、そして植物に関する文化と科学技術の振興、希少種や自然環境の保全などに大きく貢献する事業を実施してまいりました。
さて、今年の開催を引き受けてくださった水戸市植物公園は、1987年に開園いたしました。建物と緑をライフワークとし、全国各地の植物園の温室設計を手がけた建築家の瀧光夫氏が、イタリア式庭園の手法を取り入れて設計したものです。園内には、観賞大温室や熱帯果樹温室を擁し、随所にある池や水の流れは、自然と人工美の調和を表しているとのことです。そして同園は、市立の植物園として、多様な市民団体が活発に活動し、市民の生涯学習の場ともなっていると伺っております。
また、ここ水戸市に所在する「偕楽園」は、梅の名所として知られておりますが、園内には多種多様な植物も育まれています。「偕楽園」という名前には、領内の民と偕に楽しむ場にしたいと願った第9代水戸藩主の徳川斉昭公の想いが込められていると言われています。さらに、遡ること第2代藩主の徳川光圀公は、今のひたちなか市に有用な樹木約100種類を植えた「百色山(ひゃくいろやま)」を見本林として整備しました。この「百色山」は、一度は廃れますが、牧野富太郎博士の支援もあり、1933年に市民が主導する形で水戸市に「百樹園」として復活し、今に至っております。このように、歴史ある水戸市には、さまざまな形の植物園の原点ともいうべきものがあります。
植物園は、植物とキノコ類の系統保存と継承、多様性の保全、憩いの場および社会教育の場としての機能、園芸技術の向上、植物情報の整理・発信、そして地域・国家・人類への貢献等、多岐にわたる重要な役割を担っております。ここに集う、全国の植物園運営に携わる皆様が、そうした植物園の社会的重要性を意識し、植物園のますますの発展に寄与していただくことを願っております。
おわりに、本日からの大会が、植物園を拠点とした植物やキノコ類の管理育成および多様性保全、植物学ならびに植物文化の普及啓発などについての活発な意見交換と情報交換の場になることを期待いたします。そして、全国の植物園の有機的なつながりを一層強め、あわせて、日本植物園協会の活動がますます充実していくことを願い、私の挨拶といたします。