総裁のおことば

公益社団法人日本植物園協会第 60 回大会 総裁 秋篠宮皇嗣殿下お言葉

2025 年(令和 7 年)5 月 27 日(火)

「公益社団法人日本植物園協会第60回大会」が、浜名湖や天竜川、遠州灘などの豊かな自然環境を有する浜松市で開催され、本年も皆様とお目にかかれましたことを誠にうれしく思います。また、本日表彰を受けられる方々に、心からお慶びを申し上げます。

日本植物園協会は、1947年5月の創立以来、今年で78年を迎えました。この間、全国的な植物園ネットワークを通じて、植物園や植物に関する文化と科学技術の振興、希少種や希少品種、自然環境の保全に大きく貢献する事業を実施してまいりました。

当協会が社団法人となった1966年の開催を第1回とするこの大会は、今回、60回目を迎えることとなりました。60回記念事業の一環として、大会2日目には、開催園である「はままつフラワーパーク」の塚本こなみ園長による記念講演が予定されております。このような節目の大会を、ここに集う、全国の植物園運営に携わる皆様とともに迎えられますことを、誠に喜ばしく思います。

さて、このたびの開催を引き受けてくださった「はままつフラワーパーク」は、1970年9月の開園以来、市民の憩いの場として親しまれてきました。また、世界の植物展示や新品種開発にも取り組み、百種接分菊の栽培管理や展示等の活動をとおして、日本の伝統園芸の継承にも寄与しています。昨年には、私が名誉総裁を務めた浜名湖花博から20周年の記念事業を実施したところ、浜松市民のみならず、県外や海外からも多くの来園者を迎えたとのことです。テクノロジーと花と緑の融合を提案・発信する拠点として、幅広い世代に認知していただく契機となり、人々の植物への関心を高め、ひいては植物園としての存在意義を高める成果を得ることができたと伺っております。

気候変動などの地球環境問題に直面している今日、絶滅危惧種の系統保存や、生物の多様性保全など、従来から植物園が取り組んでいる様々な活動は、年々その重要性を増してきております。中でも、若い世代に向けて行う植物に関する知識の普及と啓発を図る活動は、持続可能な社会の実現のための大きな役割を果たしていると申せましょう。ここに集われている、全国の植物園運営に携わる皆様が、そうした植物園の社会的重要性を意識し、植物園の一層の発展に寄与していただくことを願っております。

植物園には、開園に至るまでの様々な経緯を由来とした特色や専門分野があり、活動内容は多岐にわたります。そのような状況のもと、園間の相互連携を深めることも大切です。各園の地域や風土に根差した独自の活動に、他園から学ぶべき点を加えることで、それぞれの園が担う社会貢献の領域を今まで以上に広げることが期待されます。

おわりに、本日からの大会が、植物園を拠点とした植物の管理育成および生物多様性保全、植物学ならびに植物文化の普及啓発などについての活発な情報交換と意見交換の場になることを期待いたします。そして、全国の植物園の有機的なつながりがさらに強まり、あわせて、日本植物園協会の活動が今以上に充実していくことを祈念し、大会に寄せる言葉といたします。