総裁のおことば
公益社団法人日本植物園協会第54回大会 総裁 秋篠宮皇嗣殿下 おことば
公益社団法人日本植物園協会「第54回大会」が、広瀬川の河畔や青葉山の緑が一体となって「杜の都」と呼ばれるようになったこの仙台で開催され、皆様にお会いできましたことを誠に嬉しく思います。
この度の大会開催園である「東北大学学術資源研究公開センター植物園」は、1958年4月に開園して以来、60年余にわたり、大学における研究および教育活動の場としてのみならず、市民にも広く公開され、植物を初めとする生物の多様性を観察する機会を提供してこられました。
青葉山の丘陵地に位置するこの植物園の一帯は、伊達政宗による仙台城築城以来400年間、ほとんど人の手が入ることなく残されてきており、1972年に、植物園としては日本で初めて国の天然記念物に指定されました。そのため、百万都市仙台から徒歩で往来できる距離にもかかわらず、当地方の丘陵地の自然植生であるモミの極相林(きょくそうりん)が維持され、稀少な植物種の自生地にもなっております。
また園内には、国内外から収集された400近いヤナギ科植物の系統が維持されているほか、50万点を超える、国内有数の植物標本庫を備えており、国内外から多数の研究者の訪問を受け、植物の分類学や系統学の研究に寄与されていると伺っております。
日本植物園協会は、植物園や植物に関する知識および文化の発展、科学技術の振興、植物種をはじめとする自然環境の保全に貢献する事業を活発に行い、人類と自然が共存する豊かで持続的な社会の実現を目指してまいりました。
本日からの大会が、植物園を拠点とした植物の管理育成、植物多様性保全、植物学及び植物文化の普及啓発などについての活発な意見交換の場になるとともに、全国の植物園の有機的なつながりを一層強め、あわせて、日本植物園協会の活動が今後ますます充実していくことを期待いたします。
おわりに、今回の大会が皆様にとって実り多きものとなることを祈念し、私の挨拶といたします。