総裁のおことば
公益社団法人日本植物園協会第58回大会 総裁 秋篠宮皇嗣殿下 おことば
「公益社団法人日本植物園協会第58回大会」が、日本の植物分類学の基礎を築いた牧野富太郎博士生誕の地である高知県で開催され、皆様とお目にかかれましたことを誠にうれしく思います。また、本日表彰を受けられる方々に、心からお祝いを申し上げます。
日本植物園協会は、1947年5月の設立以来、今年で76年目を迎え、全国的な植物園ネットワークを通じて、植物園や植物に関する文化と科学技術の振興、自然環境の保全に大きく貢献をする事業を実施してまいりました。
近年、気候変動をはじめとする様々な環境諸問題に直面しているのみならず、感染症の流行にも対処する必要性がある中、自然や社会生活に対して持続可能な新たな向き合い方が求められております。このような状況のもと、生物多様性の保全、普及啓発、創薬資源への応用などの面から、全国の植物園が果たす役割は、ますます大きなものになっていると考えます。ここに集う、全国の植物園運営に関わる皆様が、そうした使命感を共有し、植物園のますますの発展に寄与していただくことを願っております。
さて、このたび開催園をお引き受けいただきました高知県立牧野植物園は、3年前の第55回大会が行われることになっておりました。しかるに、COVID-19の感染が拡大したことにより中止となりました。そのことからも、本年第58回大会がこの地で開催されることを誠に喜ばしく思います。
高知県立牧野植物園は、1958年4月、牧野富太郎博士の業績を顕彰するために高知市五台山(ごだいさん)に設置され、牧野博士ゆかりの植物や高知県特有の植物を中心とした多彩な植物展示、同博士が蒐集した植物標本や蔵書、植物画など各種資料の保存、そして現在における国内外の植物の蒐集・保存、研究、教育普及に取り組む総合型の植物園として活動されていると伺っております。
私も今から35年前に一度訪れたことがあります。園内を散策して植物を楽しむとともに、同博士が蒐集した本草書などの説明を受けたことなどを今でも懐かしく想い出します。私は明日、久方ぶりに牧野植物園を訪ねる予定にしておりますが、牧野博士が行ってこられた多大な業績の一端に改めて触れてみたいと思います。
現在、連続テレビ小説とも相俟って、牧野博士へ注目が集まっておりますが、それとともに植物に興味をもつ人も増えてきているのではないかと思います。この機会に植物、そしてそれらを見ることができる植物園への関心が今まで以上に高まることを願っております。 終わりに、本日から始まる大会が、植物の管理育成、植物多様性保全等の活動を通じ、日本の未来にとって植物園が担う役割がどうあるべきか、活発な議論と意見交換の場となり、植物園協会の活動の意義がますます深まりますことを祈念し、私の挨拶といたします。